今回紹介するたばこ業界で世界的企業の「アルトリア・グループ」です。
たばこ業界の巨大企業
アルトリア・グループは日本では馴染みのない社名ですが、たばこ企業として世界的に知られているフィリップ・モリスと深い関係があります。
概要
- 名称:Altria(アルトリア・グループ)
- ティッカーシンボル:MO
- 事業内容:食品、たばこ産業
- 公式サイト:The Official Altria Group Website – Altria
アルトリアの歴史
アルトリアは正確に言えばアルトリア・グループです。
アメリカを本拠地としている、食品、たばこ産業です。
食品とたばこ。関連性はありませんが、日本で言えばJTのよう企業です。
2008年までNYダウ工業株30種構成銘柄でしたが、現在ははずれています。
たばこ事業
アルトリアの名前は知らなくても、フィリップ・モリスなら知っている人も多いはずです。
アルトリアは元々フィリップ・モリスという社名でした。
社名が変わったのは2003年です。フィリップ・モリスからアルトリア・グループへと変更しました。
フィリップ・モリスと一言でいっても現在の形になるまでの経緯は複雑です。
フィリップ・モリスはアメリカでの販売を担当してるフィリップ・モリスUSAと、アメリカ以外で販売を担当しているフィリップ・モリス・インターナショナルがあります。
ロゴやマークはさまざまあるのですが、違いは「USA」や「INTERNATIONAL」があるかないかほどの違いです。


フィリップ・モリスUSAは現在でもアルトリアの子会社です。
フィリップ・モリス・インターナショナルは2008年にスピン・オフされて生まれた企業です。
日本でフィリップ・モリスのたばこを買うときはフィリップ・モリス・インターナショナルから買っていることになります。
アルトリアがたばこを販売するうえで、アメリカ国内と海外とで販売企業を分けた理由には、たばこの健康被害につきまとう「訴訟」に対応するためといわれています。
訴訟大国であるアメリカ。たばこ企業は健康被害で訴えられるリスクを常に背負っています。
昔と違い現在はCM放送もなければ、たばこのパッケージに危険を知らせる警告を掲載するまでになり、喫煙は自己責任論に徹するスタイルをとって訴訟リスクを減らしています。そこまでしなければならないのです。
もし訴訟されてしまえば世界展開している企業だけに、一つの訴訟が全体の戦略を遅らせたり、足を引っぱる原因となります。
そのリスクを極力回避するため米国販売と海外販売でわけたと言われています。
米国で訴訟が起きても米国販売担当の企業が対応すればよく、海外展開している企業に大きな支障は起きません。
食品事業
日本のJTを考えてもらえばわかりやすいと思いますが、JTはたばこだけではなく冷凍食品の『テーブルマーク』を持っています。
アルトリアもたばこ販売だけではなく食品メーカーが傘下にありました。この食品メーカーも買収やスピン・オフなどを繰り返し複雑な経緯を作り出しています。
第二次世界大戦以降、たばこ業界は2社が支配する市場でした。それがフィリップ・モリスとRJレイノルズ・タバコです。

フィリップ・モリスのブランドといえば「マールボロ」「ラーク」「パーラメント」など日本でもよく知られています。
RJレイノルズ・タバコのブランドは「キャメル」をはじめ、「ウィンストン」「セーラム」などがあります。
たばこ企業の株を保有している人はわかると思いますが、配当の高さが目立ちます。これは潤沢なキャッシュがあるという証拠です。
たばこを製造するには一度設備投資を行えばいいわけです。
極端な言い方をすれば毎年毎年設備を買い替える必要はありませんし、工場が稼働さえすれば、たばこを作り続けることができるわけです。
豊富なキャッシュの行方は株主への配当に回るか、自社株買いを行うか、企業買収に向かう資金として使われます。
たばこ企業は食品業界に狙いを定めました。
1970年、フィリップ・モリスはミラー・ビールを買収します。

1985年にはゼネラル・フーズを買収。
フィリップ・モリスのライバルだったRJレイノルズ・タバコは『オレオ』で有名なナビスコを買収して、RJRナビスコを設立しました。
1988年、フィリップ・モリスは『クロレッツ』などで知られるクラフトを買収します。

1989年、RJレイノルズ・タバコが設立したRJRナビスコは、ニューヨークを拠点とする投資ファンド運営会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に買収され非上場になります。
1991年、KKRはRJRナビスコ・ホールディングスとしてその一部を放出しています。
2001年、フィリップ・モリスはこのナビスコ・ホールディングスを買収。
これによりフィリップ・モリスは傘下にあったゼネラル・フーズ、クラフト、ナビスコ・ホールディングスの3社を『クラフト』の名前で1社にまとめ、新規公開株としてクラフト株を16%売却しました。
2002年、傘下のミラー・ビールがイギリスのサウスアフリカンブルワリーズ(SAB)に買収され、SABミラーとなりました。

このときフィリップ・モリスは現金の代わりにSABミラー社の株式を取得し大株主となります。現在でも約28%のSABミラー株を保有しています。
2003年、社名をフィリップ・モリスからアルトリア・グループへ変更します。
2007年、クラフトフーズをスピン・オフ。さらに海外部門のフィリップ・モリス・インターナショナルもこのときにスピン・オフしています。
なお、クラフトフーズはその後、3Gキャピタルとバフェット率いるバークシャー・ハザウェイの手によってケチャップで有名なハインツと合併。社名を「クラフト・ハインツ」として誕生させました。
アルトリアの状況
ライバル企業
たばこ企業の枠で見れば、
- レイノルズ・アメリカン(RAI)
- ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)
- インペリアル・タバコ・グループ(IMT:ロンドン)
- JT
などになります。
訴訟リスク
喫煙による健康問題。それによる訴訟リスクを常に抱えています。そして現代のたばこ離れです。
日本だけではなく、世界的にたばこの料金が値上がりしています。
値上がりすれば喫煙者もたばこをやめる傾向になるのは当然です。
そして次第になくなっていく喫煙場所。
喫煙者の肩身は狭くなる一方です。
そこまでしてたばこを吸いたいと考えるか。
しかしたばこ業界も黙っていません。
電子たばこ
これまでのたばこは少しずつ姿を変えて、近年は電子たばこも販売されています。
2014年、アルトリアは電子たばこを手がけるグリーン・スモークを買収しました。
またライバルであるレイノルズは、電子たばこで売上上位のロリラードを買収しました。
日本でも匂いや煙が気にならない「ヒートスティック型タバコ」といわれる『アイコス(iQOS)』なども発売されています。

高配当連続増配銘柄
たばこ銘柄は常にリスクがあります。
しかしそれ以上に魅力なのは高い配当利回りです。2020年8月現在は8%ほどになっています。
これは高すぎますね。
さらに51年連続増配中というアメリカ株では連続増配常連の銘柄です。
優良銘柄のP&Gやジョンソンエンドジョンソンに負けず劣らずの銘柄です。
株価の推移

2020年8月現在のアルトリアグループの株価です。
まとめ
現在のアルトリアの株価は42ドルほど。配当利回りは8%となっています。
アメリカ株投資において魅力的なのは世界的大企業に投資できることと、安定的に得られる高い配当。そして配当はなくても成長著しいグロース株に投資できることです。
アルトリアは長い企業歴史と安定的に得られる配当が魅力的です。
アメリカ投資を行っている人の中には高配当銘柄を中心に購入して配当を再投資して資産を増やす、バフェット流な投資を実践している人が多くいます。
アルトリア、フィリップ・モリスなどのたばこ銘柄は高配当で好まれます。
世界的にたばこ産業は縮小傾向にあります。
さまざまな場所で喫煙はできなくなり、たばこ自体の値段も上がっています。
また健康被害による訴訟リスクも小さくはありません。
それでもたばこはなくならず現在でも必要とされています。
従来の紙たばこから電子たばこへと姿を変えて生き残りを図っています。
未来永劫とはいかなくても、まだしばらくは投資の恩恵はうけられそうです。
(株投資は自己責任でお願いします)