通信業界再編に加速
アメリカ国内の通信、電波を管理する連邦通信委員会(FCC)の新委員長が決まりそうです。
この人事によりアメリカの通信業界の再編がどのようになるか気になっていましたが、「ネット中立性」に批判的な人物が指名されたことで再編が加速しそうです。
アジット・パイ
トランプ大統領はFCCの新委員長に、オバマ政権が推進いていた「ネット中立性」に批判的な人物、アジット・パイを指名したと伝わりました。
[ワシントン23日ロイター]トランプ米大統領は23日、連邦通信委員会(FCC)の委員長にタジット・パイ氏を指名した。共和党系のFCC委員として規制緩和を訴えてきたパイ氏の委員長就任で、米国の通信政策は大幅に転換される見通しだ。
パイ氏は先月、前政権下で成立したインターネット接続業者にネット上の情報を平等に扱うことを求める規制「ネットの中立性」について、長続きしないと発言。「投資やイノベーション、雇用創出を抑制している不要な規制はなくすべき」と述べた。
FCC委員長は通信企業のM&A(合併・買収)の承認をめぐり主要な役割を果たす。
パイ氏はFCC委員長への就任にあたり、上院の承認を得る必要はない。任期は今年いっぱいとなる。
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1月23日、パイはFCC新委員長に指名されたことについて大統領へ感謝したことを発表しました。複数のメディアはパイが新委員長に就任する見通しを示しました。
パイはオバマ政権の2012年からFCC委員を務めています。政府機関での勤務経験はおよそ15年ということです。
ネット中立性とは
『ネット中立性』とは、インターネット上のトラフィック、つまりツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどへの投稿や閲覧などはすべて平等に扱われるべきという規制です。
インターネットのプロバイダーなどはユーザーのアクセスを拒否したり、制限をかけたりすることはできません。それが『ネット中立性』です。この規制にパイは批判的というわけです。簡単に言えば「政府が規制などしない自由市場がいいね!」ということです。
パイは2016年12月に、ネット中立性規制は撤回されるとの見方を示し、
「投資やイノベーションを妨げる規制をFCCは芝刈り機で一掃する必要がある」
とまで言っています。
再編の波
FCCは5人の委員で構成されていますが、現在のFCCには委員が3人しかおらず、パイは2人の共和党系委員がいる内の1人です。残り2つの空席には、共和党系と民主党系がそれぞれ入る見通しですが、大統領のトランプをはじめ、政府は共和党が多数なので、FCCも共和党系が多くなります。
これによりメディアと通信事業者の大型合併が加速するかもしれません。
オバマ政権では2015年に、ケーブルテレビ大手のコムキャストよるタイム・ワーナー・ケーブルの買収を認めませんでした。またソフトバンクグループ傘下の携帯電話大手スプリントによるTモバイルUSの買収も現実にはなりませんでした。
パイは共和党政権であればコムキャストとタイム・ワーナー・ケーブルの合併は承認されていたと語ったことがあります。実際にパイ自身は2015年のAT&TによるディレクTV買収に賛成票を投じています。
アジット・パイがFCCの新委員長になれば、通信業界の再編の波が起こるかもしれません。ソフトバンクが再びのTモバイル買収に向かうか。
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