師弟関係
アメリカ次期大統領にトランプが決まってから大方の予想に反してニューヨーク株式市場は上昇を続けてきました。
すぐに下落すると思われていた「トランプラリー」は2016年中は大きく調整することもなく、NYダウは2万ドル手前まで迫りました。
この「トランプラリー」で明暗を分けた投資家がいます。イングランド銀行を潰した男ジョージ・ソロスと、彼の弟子であるスタンレー・ドラッケンミラーでした。
10億ドルの損失
ロイターが伝えました。
[12日ロイター]米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、著名投資家ジョージ・ソロス氏は、昨年11月の米大統領選でのトランプ氏勝利を受けた株価上昇で、選挙後の数週間に10億ドル近い損失を出した。
一方、ソロス氏の片腕として92年の英ポンド売りを主導したことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏は、株価上昇を見込んで利益を得たという。
同紙によると、ソロス氏は昨年、投資の第一線に復帰。11月まで株式市場に対して慎重な姿勢を示しており、トランプ氏の勝利直後にはさらに警戒を強めた。この結果、損失が10億ドル近くに膨らんだが、昨年末には方針を転換し、損失の拡大を回避したという。
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ソロスはアメリカ大統領選でトランプが勝利すれば株価は急落すると警戒していました。
「トランプ当選=市場暴落」
民主党のヒラリー・クリントンを支持していた多くの投資家はそう考えていました。ソロスもクリントンを支持していた一人です。
どのようなポジションを保有していたかわかりませんが、株式の空売り、国債の購入などが考えられます。
しかし、市場は選挙期間中のトランプの発言に期待を持ちました。その結果、株価は予想に反して急上昇。「トランプラリー」が始まりました。それによりソロスは10億ドル(およそ1140億円)近くの損失を計上したそうです。
ドラッケンミラーの読み
1992年、ソロスがポンドの取引でイングランド銀行を負かし10億ドルの利益をあげました。そのときにソロスのチームにいたのがスタンレー・ドラッケンミラーでした。
アメリカ大統領選においてドラッケンミラーは、民主党のクリントンが勝利した場合、一時的に株価は上昇するが、その後大きく崩れると予想していました。
もし共和党のトランプが勝利した場合、一時的に株価は売られるが、その後上昇すると予想していました。
結果は、ドラッケンミラーの読みが当たりました。
第2ラウンドは大統領就任式後
2017年1月11日、トランプは大統領当選後はじめて記者会見を行いました。
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会見内容に新鮮味はありませんでした。市場が期待していた減税やインフラ投資への言及はなく、この会見後、為替はドル安となり、ニューヨーク市場も上値が重い状態が続いています。
ドラッケンミラーはトランプ政権に強気です。トランプが主張している保護貿易に対しては、
「保護貿易の恐怖ばかりが強調されているが、他の政策のプラス面に比べて、保護貿易の恐怖は誇張され過ぎている」
としてアメリカ経済は成長に向かうと予想しています。
一方、ソロスのことは伝わってきていませんが、現在でもトランプ政権に弱気なのでしょうか。
どちらにしても1月20日の大統領就任式でトランプは何を語るのか。もし政策について内容のないことをつらつらと語るだけなら株式市場は崩れるかもしれません。そうなれば第2ラウンドは弱気のソロスに軍配があがるかもしれません。引き続きソロスが弱気なら。
「うわさで買って事実で売る」
(アイキャッチ画像/著作者:Martin Hricko)